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● 帆翔への適応 <V字形の翼> チュウヒが帆翔している姿を正面から見ると、両側の翼が浅いV字形を描いているように見える。このような翼の形は、カワラバトやノスリなどにも見られるが、チュウヒは翼の長さも相まって、特徴的な飛翔姿となっている。 このような翼の形は、揚力が低下する低速での飛行の際に、体のバランスを保つのに役立っていると考えられている。そのため、チュウヒは低速でヨシ原の上を帆翔することを得意としていると考えられる。 なお、アフリカチュウヒでは、無風状態の時にはネズミ類を捕まえることが少なく、微風以上の風が吹いているときに良く捕まえることが報告されている(Simmons 2010)。このことからも、チュウヒは風を利用して効率的に帆翔していることがうかがえる。 (翼を浅いV字型に保って、ヨシ原の上を滑るように飛ぶ) ● 音への適応 <聴力> チュウヒの顔を正面から見ると、顔の正面を形成する羽が、フクロウのようにパラボナアンテナのような形(顔盤)になっている。一方で、チュウヒ類の耳はフクロウのように非対称の位置に存在していないため(Simmons 2010)、聴覚は水平方向のみに優れていると考えられる。 しかし、顔盤による集音効果には、次に述べるようにいくつかの疑問が存在する。ハイイロチュウヒでは、大きな顔盤によって、メンフクロウ類と同等の正確な音の分解能を持つとされている(Rice 1982)。しかし、ミナミチュウヒでは、指向性の聴覚を強化するには、顔盤の直径が小さすぎることが指摘されている(Calford et al 1985)。 この「顔盤が小さい」という矛盾を解決する例として、マダラチュウヒでは、顔盤の羽を上げ下げできることが指摘されている(Neufeldt 1964)。つまり、チュウヒ類は顔の羽を動かすことで顔盤を大きくし、集音能力を強めていることが推測されている。 チュウヒを野外で観察した限りでは、その顔盤はハイイロチュウヒほど顕著なものには見えない。そのため、チュウヒの顔盤による集音能力の向上の程度は、今のところ不明である。 横顔は他のタカ類と似るが、正面からはフクロウのように見える。 <風切羽の特徴> チュウヒの風切羽の表面は、フクロウ類のようなビロード様のやわからな触感をしている。このことから、チュウヒの羽は帆翔時の消音効果を持っていると思われる。 しかし、フクロウ類に特徴的な、前縁初列風切羽の外弁の縁にある櫛状の粗毛は、チュウヒの羽には見当たらない。そのため、チュウヒの羽がどれほどの消音効果を持っているのかは、今のところ不明である。 |