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狩りの方法



要約

 チュウヒは「不意打ちハンティング」と呼ばれる特徴的な狩りをする。これは低空で帆翔しながら耳と目を使って餌を探し、獲物を見つけると背丈の高い草陰から獲物を急襲する方法である。この特徴的な狩りはヨシ原などの草地環境を最大限に活かした狩りであり、チュウヒがヨシ原を代表する猛禽類となっている大きな要素である。




不意打ちハンティング

 チュウヒはヨシ原での狩りに適した、独特のハンティングスタイルを持っている。その様子について、チュウヒと近縁種のヨーロッパチュウヒでは、「ヨシ原などの上空を低く飛びながら、植物などを陰にして獲物に近づき、奇襲する方法」と記述されている(Clarke 1995)
 そのため、同じネズミ食のノスリがホバリングなどで一点から狙いを定めて獲物を捕まえるのに対して、チュウヒは餌のいる場所を帆翔して回り、見つけ次第反射的に急降下して獲物を捕まえる。このような不意打ちハンティングを行うには、獲物の存在をいち早く知る必要があることから、チュウヒは草陰の獲物を見つける際に聴力に頼るところが大きいと思われる。
 餌を探しているときのチュウヒの飛行高度の74.4%は1〜5mの高さ(黒田 1994)や、7割ほどが1〜10mの高さだった報告がある(浦・長谷部ほか 2019)このような低空飛行は不意打ちハンティングを効率的に行うためのものであると考えられる。
 なお、北海道サロベツ湿原での6〜8月のチュウヒの飛翔高度(採食行動以外も含む)は、
日の出すぐは1〜10mが多く、日の出4時間後から10〜20m、日の出5時間後からは30〜120mが増えてくる(浦・長谷部ほか 2019)

    (不意打ちハンティングで、獲物に向かって急反転している様子。)



その他のハンティング方法

疑似攻撃の繰り返しで獲物を弱らせる

 開けた水面に浮かぶカモ類を襲う際に見られることがある。疑似攻撃を繰り返すことで獲物に連続して潜水させ、それによって弱ったところを襲う。
 カモ類の多い越冬期にしばしば観察される。


地上に降りての狩り

 地上に降りている際に、獲物に向かって走り、最後に小さくジャンプして獲物を捕まえることがある。急降下の後に獲物を捕らえそこなった時には、地上に下りたまま逃げた獲物が現れるまで待ったり、歩き回って獲物を追い出そうとすることがある(森岡ほか 1995)
 草むらの中にいるチュウヒを直に観察できることは希だが、チュウヒが降りたところとは別の場所から飛び立つ様子は時々観察されるため、ヨシなどの影で観察しにくいだけで、珍しいハンティング方法ではない可能性がある。


他の猛禽類からの横取り

 オオタカが捕らえた餌を横取りしている可能性を示唆した報告がある(平野ほか 2005)筆者もハヤブサから餌を横取りしたと思われる事例を何度か観察したことがあり、ミサゴやハイタカが捕まえた餌を横取りしようとした事例を観察したこともある。
 生息地での他の猛禽類の種類や密度によっては、希ではない採餌方法の可能性がある。


柱の上などから狙いをつけての狩り

 柱や木の上から獲物に向かって一直線に飛んで着地し、獲物を捕まえる。
 9月頃にはヨシ原に集まったスズメの群れに対して、近くの木の上からこのハンティングを繰り返していた観察例もある。ただし、多くのチュウヒにとっては一般的なハンティング方法ではないようである。


高所からの急降下による狩り

 地上から数十メートル上空を帆翔中に、突然、急降下して地上に降りることがある。
 その後、着地したところからキジが飛び出して来たり、チュウヒが10cmを超える餌を捕まえていたりすることから、高所を飛行中に大きな獲物を見つけた際に行うものと思われる。
 ただし、狩りの方法としては稀な方法のようで、このような狩りが観察されることは少ない。


水面への着水による狩り


 水面や水中の魚を捕る際に、ホバリング状態から急降下して、水面に着水しながら採食することがある。着水後は獲物を持ったまま翼を羽ばたかせながら岸まで泳いで行くことがほとんどで、ミサゴのように餌を持って水面から飛び立った事例を筆者はまだ見たことがない。


死肉食い


 ハンティングではないが、チュウヒは死肉を食べることがある。
 事例として、サギ(日本野鳥の会 2002)、ウ類(環境省自然環境局 2015)、(日本野鳥の会 2002)ネコ(鶴 1990)、が報告されており、筆者はマガモや魚(ボラやフナ)の死体を食べていた例を観察している。
 死肉を食べる様子はしばしば観察されることから、餌が不足した際などの一般的な行動と思われる。ただし、死体全部を食べきることは少ないようで、一部分だけ食べて止めてしまうことが多い。


飛んでいる鳥への急襲

 草むらから飛び立った小鳥を背後から空中で捕えることがある(鶴 1990)
 不意打ちハンティングの途中で飛び立った小鳥に対して行われることが多いが、成功率はかなり低く、場当たり的なハンティングのように感じられる。



ホバリング状態からの急襲

 不意打ちハンティングの際に、一時的なホバリング状態となる様子がよく見られる。
 しかし、ノスリのように高度上空からのホバリングによる狩りはしないようである。
 ヨーロッパチュウヒでは、ホバリングでの狩りは背丈の高い草原(1.5m以上)にいる大きな獲物を狩るときによく観察されたとの記述がある(Kitowski 2007(b))。

   (狙いをつけるための、一時的なホバリング状態)




性別や年齢によるハンティング方法の違い

 性別や年齢によるチュウヒの狩りの方法の違いについて、国内の状況は明らかにされていない。しかし、チュウヒではオスの方が空中での機動力が高く、メスは仕留めることのできる獲物の大きさが大きいことから、性別による狩りの得意・不得意があると考えられる。(例えば、オスでは飛んでいる鳥への急襲がメスよりも多く、メスではカモに対する疑似攻撃の繰り返しがオスよりも多いなど)
 ヨーロッパチュウヒでは採餌の際の飛行方法として、オスではゆっくり羽ばたいて飛ぶことが多いのに対して、メスでは帆翔が多かったという報告がある(Kitowski 2007(b))
ヒメハイイロチュウヒのオス成鳥とオス亜成鳥の採餌の際の飛行方法を比較したところ、オス成鳥ではゆっくり羽ばたいて飛ぶことが多かったのに対して、オス亜成鳥では帆翔が多かったという報告がある(Kitowski 2003)







獲物を捕まえた後

 チュウヒは獲物を捕まえた後、その場ですぐに食べることもあれば、安全な場所(木や柱の上、背丈の低い開けた草地など)へ移動してから食べることもある。
 捕まえた場所から獲物を運ぶ際には、獲物をそのままの状態で運ぶこともあれば、不要な部分を解体してから運んだり、獲物の一部を自分で食べてからつがい相手やヒナに運ぶことがある。
 獲物を運ぶ際には足に掴んで運ぶが、草むらから飛び立った時点では嘴で咥えておき、空中で放して足に持ち替える場合もある。中には獲物を足に持ち替えず、嘴に咥えたまま運ぶ個体もいるが、この場合は獲物が小さく、かつ自分で食べる場合のみのようである。
 なお、捕まえた獲物が小さい場合には、獲物を持った足先を下尾筒にくっつけるようにして
運ぶ(←餌を持っていないときの通常時の飛行の位置)ことがあり、一見すると餌を持っていないように見えることもある。探餌の後に行われる餌運びや餌渡しは、探餌の時よりも飛行高度が高く、10-20mの高さで行われることが多いとの報告がある(浦・長谷部ほか 2019)



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