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チュウヒの概要




要約

 チュウヒはカラスより大きめのタカの仲間で、主にヨシ原などの草地に生息する。日本で繁殖するタカの仲間では唯一、地上に巣を作る。
 国内で観察されるチュウヒには、国内で繁殖・越冬している個体群と、越冬期に大陸から飛来してくる個体群がある。国内で繁殖しているつがい数は約90つがい、越冬期の個体数は300〜450羽で、生息地の減少などの理由から環境省レッドデータリストでは絶滅危惧1B類となっている。
 チュウヒは湿地性の大型チュウヒ類であり、国内でも観察されるハイイロチュウヒとはチュウヒ類の中でも遺伝的にグループが異なる。



● 名称

 和名:チュウヒ
 英名:Eastern marsh harrier
 学名:Circus spilonotus
    (分類:タカ目 タカ科 チュウヒ属)


体格

 体長  : ♂48cm  ♀58cm
 翼開長 : ♂113cm ♀137cm
 体重  : ♂558g(525〜650g)  ♀813g(700〜950g)   ※体重は中川 2006より


  チュウヒの雌雄での体重の分布は分かれており、被ることは無い(中川 2006)近縁種のヨーロッパチュウヒでも、体重
 のみの結果から93%の確率で雌雄を識別可能(Clarke 1995)とされている。
  メスの方が平均的に嘴が長く、足が太い(森岡ほか 1995)。近縁種のヨーロッパチュウヒでも、嘴の長さ・ふ蹠長・ふ蹠
 幅において、メスの方が数値が大きくなる傾向があるが、識別する上での信頼性は低い(Clarke 1995)とされてい
 る。


● 他のタカ類との比較

 チュウヒの体長はオオタカやノスリと同程度だが、これらのタカ類と比べてチュウヒの足は長い。
 足が長いという特徴は、「ふしょ」(踵から足指まで)と趾(第1趾から第4趾までの先)の共に言える(森岡ほか 1995,小宮ほか 2012)


繁殖開始年齢

 オスは3年目から、メスは1年目から繁殖に参加する個体もいる(中川 2006)
 ただし、1歳10ヶ月で繁殖したメスが抱卵中に巣内で死亡した報告が1例(千葉ほか 2008)あることから、1年目からの繁殖は一般的ではない可能性もある。


寿命

 国内でのチュウヒの野生個体の最長記録は15歳(NPO法人河北潟研修所 2013)
 近縁種のヨーロッパチュウヒでは、野生個体での16歳220日の記録がある(Bijlsma 1993)


分布

 <国外>
   繁殖期:ロシア〜中国にかけての東部
   越冬期:中国東部〜タイ

 <国内>
   繁殖期:北海道〜本州
   越冬期:本州以南

  国内で繁殖を行う個体は、冬期に南に移動するものが多いようである。国外まで南下しているかどうかは不明。
  大陸で繁殖する個体の一部は、冬期に日本に渡来する。


個体数(国内)

 繁殖つがい数:約90つがい(環境省 2014)
         ※ただし、専門家の見解では推定110〜140つがい(日本野鳥の会三重 2017)

         ※日本野鳥の会の発表では2018-2020年の調査で136つがい(日本野鳥の会 2020)
 推定越冬期個体数:推定300〜450羽(環境省 2014)


繁殖成功率


 複数のつがいがいる繁殖地での繁殖成功率は、三重県で48%(近藤ほか 2013)
、秋田県で32%(平野 2010)、北海道で53.1%(唐澤ほか 2019)北海道の道央で10〜40%(先崎ほか 2015(a))、北海道の勇払平野で平均42.1%だったとの記録(Senzaki et al. 2015)がある。
 1つがいしか繁殖していない場所では連続して成功したり失敗したりするため繁殖成功率の算出が難しいが、繁殖成功率は4
0%程度というのが一つの目安になると思われる。


羽の色

 チュウヒの羽の色は雌雄や年齢で異なるが、個体差による違いも大きい。また、大陸で繁殖しているものは、国内で繁殖しているものよりも灰色や白色などが鮮やかな傾向がある。
 羽色の違いは、「日本のワシタカ類」「新訂ワシタカ類 飛翔ハンドブック」「ワシタカ・ハヤブサ識別図鑑」などの図鑑を参照のこと。

   
   (左:オス成鳥  右:メス成鳥)

    
   (左:オス幼鳥  右:メス幼鳥)


絶滅危惧種としてのチュウヒ

 IUCNのRed Listでは、最も低いランクの「Least Concern」となっている。これは、大陸の個体群も含めると絶滅の危惧は低いという見解のようである。
 一方、日本では環境省レッドデータリストで「絶滅危惧1B類」、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)では国内希少野生動植物種に指定されている。これは、日本の繁殖つがい数が約90つがいと推定されていることや(環境省 2014)生息地の開発が考慮されてのランクとなっているようである。(●都道府県別のランクはこちら
 チュウヒの個体数減少の要因には、生息地の開発が挙げられる。繁殖地周辺の1km以内の生息地面積が減少して非生息地面積(メガソーラー・都市・森林)が増加すると、チュウヒのつがい数や巣立ち雛数が減少するという結果がある(先崎ほか 2015)。最近では北海道・三重県・大阪府・岡山県などのチュウヒの繁殖地や越冬地において、大規模太陽光発電(メガソーラー)などの開発計画が進められており、新たな脅威となっている。また、風力発電施設に対する脆弱性が高いことが推定されている(長谷部ほか 2021)

遺伝的な関連(近縁種との関連)

 日本のチュウヒは過去にボトルネックを受けておらず、他の猛禽類と比べて遺伝的多様性を持っている(Nagai et al. 2017)。
 チュウヒCirucus spilonotusの遺伝的な近縁種としては、マダガスカルチュウヒC. maillardiとミナミチュウヒC. approximansがいる(Oatley et al. 2015)チュウヒとは分布域が接するヨーロッパチュウヒC. aeruginosusもチュウヒと近縁だが、遺伝的には前述の3種とは別の群に位置する(Oatley et al. 2015)。草原性のチュウヒ類であるハイイロチュウヒC. cyaneus
ウスハイイロチュウヒC. macrourusなどは、前述の湿地性のチュウヒ類4種とは遺伝的に別のグループに属している(Oatley et al. 2015)



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