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ねぐら環境とねぐら入り行動



要約

 
チュウヒはヨシ原にねぐら(塒)を作る。ねぐらはヨシなどの高層植物が生える環境で、主にスゲ類などの下層植生がある環境を利用する。ねぐらの大きさは、直径が40〜100cmほどで、周辺の草を押し倒して作っている。

 越冬期には集団ねぐらを形成することがあり、多いときには30羽以上が隣接した場所にねぐら入りする。繁殖期には単独でねぐら入りするようであり、オスは巣外にねぐら入りするが、メスは巣をねぐらとして利用する。




ねぐら入りの時刻

 チュウヒのねぐら入りは、多くは日没から日没後30分以内である(平野ほか 1998)ただし、繁殖期にはねぐら入り時刻が早いことがあったり、天候によって時刻に多少変化が見られるので、その日の採餌できた量によっても、ねぐら入り時刻が変わっている可能性がある。

 なお、朝の飛び立ち時刻は、日出20分前から10分前が多い(平野ほか 1998)


ねぐら入り前の行動

 日没60〜90分前になると、ねぐら周辺を飛び回る個体が観察される(平野ほか 1998)ねぐら周辺に飛来してきた個体は、一旦どこかに飛び去る場合と、ねぐら周辺の低木や地上になどに降りて休息する場合がある(平野ほか 1998)ねぐら入りの前に、チュウヒはねぐらの上空を飛び回るが、場合によっては複数羽が飛び交って乱舞となる。その際、一旦ねぐらに入る個体もいるが、すぐに出てきたり、あるいは他の個体に追い出されるなど、慌ただしい様子が続く。しかし、日没後30分以内までには慌ただしさも落ち着き、各個体がそれぞれのねぐらに入る。

 なお、ねぐら入り前の乱舞は、1か所にねぐら入りする個体数が多いときに起こりやすいようである。離れたねぐらに1羽ずつねぐら入りする際には、ねぐらの上空を少し旋回してみせる程度で、乱舞のような目立ったねぐら入りの様子は見られない。また、ねぐら入り直前に戻ってくる個体は、一旦ねぐら近くの樹上や地上に降りることなく、そのままねぐら入りすることもある。
 ねぐら入りの時には、ハイタカ類が飛ぶときのように翼をせわしげにはばたかせながら、ねぐらのあるあたりを飛び回り、狩りをするような勢いで地上に降りる。このような典型的なもの以外にも、通常の狩りの際同様に、帆翔しながらねぐらの真上まで移動することもある。ねぐらへの降り方について、平野ら(1998)は、「ねぐらに降りる際には、地上2〜3mの高さから、ほぼ垂直に翼を上げて降りる」と記述している。

   (ねぐら入り前に、樹上に集合した4羽のチュウヒ)




ねぐら環境の概要


【 寝床のサイズと構造 】


 寝床の広さは長径が60〜100cmで短径が30〜80cmとの報告や(平野ほか 1998)、長径が41.8±4.1〜49.3±21.6 cmで短径が35.1±6.1〜38.0±7.5cmだったとの報告がある(多田 2016)。
寝床はその場に生えている植物を押し倒して作っており、外から持ち込んで積んだと考えられる植物はない(平野ほか 1998、多田 2016)。植物を押し倒したもの以外にも、ヨシの葉や茎が薄く重なっている場所や、風などで自然に倒れたヨシの上が寝床として利用されることもある(多田 2016)。
 地上から寝床の上面までの高さは押し倒した植物などの状況によって様々で、高いものでは地上から70cmの位置に寝床の上面があることもある(多田 2016)。
 寝床には踏み分け道のような溝が続いていることもあり(平野ほか 1998)、これはねぐら入りの際に一旦寝床の近くに降りた後、寝床まで歩いて移動している跡だと考えられる。


【 ねぐら環境の条件 】

 ねぐら環境に生えているヨシなど高茎植物の生育密度は、周辺の非ねぐら環境よりも少ないことから(平野ほか 1998、環境省自然環境局 2015、多田 2016)、チュウヒはねぐらへの出入りが容易な環境を好選することが指摘されている(平野ほか 1998)。また、同じヨシ原環境での就塒の有無を比較したところ、就塒が観察された環境は水路によって周辺の環境と隔離されている傾向が見られたとの報告がある(多田 2016)。
 近縁種のヨーロッパチュウヒでは、ねぐらを選ぶ際の要因として、身を隠すことによる捕食者の回避と風よけによる防寒効果が指摘されている(Verma&Prakash 2007)。このことはチュウヒがねぐらを選択する際にも影響していると思われる。


【 ねぐらのバリエーション 】


1.下層植生のあるヨシ原

 チュウヒの一般的なねぐらは下層植生のあるヨシ原である。ねぐら場所の高茎植物は、ほとんどがヨシとオギであるが、なかにエゾミソハギも含まれていたとの報告がある(平野ほか 1998)。ねぐら周辺のヨシの草丈は1.2〜2.4mで(多田 2013、環境省自然環境局 2015、多田 2016)、高茎植物の生育密度は1平方メートルあたり10.21±7.48本だった例や(平野ほか 2010)、1/4平方メートルあたり平均で49.87本だった例がある(環境省自然環境局 2015)。下層植物としてはコブナグサやアゼスゲなどのイネ科植物や(平野ほか 1998)、カサスゲ(環境省自然環境局 2015)、シオクグ(多田 2016)の例がある。寝床は周辺の下層植生を押し倒して作っている(平野ほか 1998、多田 2016)。
 少し変わった植生のねぐらとして、高茎植物が1m程のセイタカアワダチソウで下層植生が背丈の低いオギだった例がある(環境省自然環境局 2015)。また、下層植生の有無は不明だが、クサヨシ環境の例もある(先崎 2015)。
 なお、ねぐらの夜間の気温について、調査した5か所のうち、2か所ではヨシの密生場所(下層植物なし)との間で有意な差は見られなかったが、3か所ではねぐらの方がヨシ密生地よりも平均0.53〜1.51℃高かったとの報告もある(平野 1998)。

    
       (左:夏の状態)          (右:冬の状態)      ※メジャーは寝床の長さを示す 


2.下層植生のないヨシ原

 草丈1.2〜2.5m のヨシだけが生えており、地面は湿り気があるか2〜4cm の深さで水が溜まっている(多田 2016)。寝床にはヨシの葉や茎が薄く重なっている場所や、倒れたヨシの上を利用している(多田 2016)。

   (メジャーは寝床の長さを示す)

3.風などで広範囲に倒れたヨシ原

 草丈1.8〜1.9m のヨシ原の一角が風によって約10m 四方の広さで平らに倒れている場所の一部で、寝床には倒れたヨシを利用している(多田 2016)。明確な寝床様の構造がなく寝床の正確な大きさは不明だが、他のねぐら環境の寝床と同程度の大きさと推測される(多田 2016)。
 なお、岡山県では草丈2.6〜2.9mのオギ原でも同様のねぐらが観察されている(多田 未発表)。

   
          
(左:夏のヨシ原での1例)                    (右:冬のオギ原での1例) ※メジャーは寝床の長さを示す


【 ねぐら環境の季節変化 】


 生息地によっては、チュウヒのねぐら環境は季節によって変化している。岡山県の錦海塩田跡地では、下層植生を伴うヨシ原環境は防寒効果が高いため冬期に利用が増加するが、夏期には植物が過密になるため利用が低下し、ヨシが風で広範囲に倒れた場所では防寒効果が低いため冬期の利用が低下することが考察されている(多田 2016)。
 このような寝床環境の季節的な変化の要因として、気温や捕食者、植物の生育密度が考えられている(多田 2016)。

1.越冬期のねぐら

 
越冬期には、チュウヒは集団ねぐらを形成することがある。集団ねぐらといっても、1つのねぐらを複数羽で利用するわけではなく、個々のねぐらが近い位置にある状態となっている。1か所あたりのねぐらの利用個体数は、1〜31羽であったとの報告がある(平野ほか 2010)。ねぐらの就塒個体数は調査年によって著しく変動し、当該のねぐらが使われる年もあれば、使われない年もある(平野ほか 2010、多田 2016)。また、日によっても使用するねぐらが変わることがある(平野ほか 1998、多田 2016)。
寝床間の距離の多くは6〜7m以上離れているが、近いものでは約3〜3.5mだったものがある(平野ほか 1998)。また、寝床は散在しており、特定の場所、たとえば半径2m以内などに密集していることはないとの報告もある(平野ほか 1998)。ただし、同じ個体が作ったねぐらだったのか、2つのねぐらが10cmほどの距離で隣接していた例を観察したことがある。
 なお、越冬地によってはチュウヒが集団ねぐらを形成することなく、各個体が別々の場所にねぐら入りすることも多い。個別にねぐら入りする条件は不明だが、ねぐらとして利用可能な環境の数が多い場合や、越冬地のねぐら入り個体数がそれほど多くない場合に、個別にねぐら入りすることが増えるものと思われる。

2.繁殖期のねぐら

 
抱卵期以降、メスは巣をねぐらとして利用し、オスは巣の近くの別の場所にねぐらをとる(日本野鳥の会岡山県支部 2002)。メスは昼間に巣に留まることがなくなってからも、巣へのねぐら入りが観察されている(日本野鳥の会岡山県支部 2002)。抱卵期における巣とねぐらまでの距離は214±129mだった例がある(多田 2016)。
 筆者が観察した限りでは、繁殖期には集団ねぐらを形成していないようである。




近縁種でのねぐら環境の事例

 チュウヒの近縁種であるヨーロッパチュウヒでは、上記のヨシ・スゲ環境以外にも、観察例が少数例なもの含めて様々な環境をねぐらとして利用している。例えば、草地をシカなどの有蹄類が踏み倒したところ、耕した農地などの裸地、海岸の岩の上、地上に塩性の泥が固まった砂漠の一角、樹上などの記録がある(Clarke 1995、Sammut 2005、Verma&Prakash 2007)。


ねぐらとペリット

 チュウヒのねぐらには、ペリットが落ちていることがある(平野ほか 2005,多田 未発表)チュウヒは止まった先でペリットを吐くため、必ずしもねぐらで吐いているわけではないが、よく使われているねぐら環境では、ねぐらの上にペリットを見つけることができる。
 近縁種のヨーロッパチュウヒでは、ねぐらのうち57.4%で1〜5個のペリットが見つかったとの記録がある(Kitowski 2007(a))。

      



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