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換羽



 毎年1回、4〜5月ごろから冬にかけて全身の換羽を行う(森岡ほか 1995)繁殖中でヒナへの給餌が盛んになるときには、換羽を停止しているようである。なお、近縁種のヨーロッパチュウヒでは、10月には大体換羽を完了しているようである(Clarke 1995)
 
 メスは繁殖前期に風切を3〜4枚まとめて落として換羽を開始するが、ヒナが3週齢になる頃にはメスの脱落した風切が生えそろい、残りの風切の換羽を中断してメスも狩りに参加するようになる(中川 1991,森岡ほか 1995)。そして繁殖をほぼ終える頃に換羽を再開する(森岡ほか
1995)。
 
オスはメスより少し遅れて換羽に入る(森岡ほか 1995)。また、巣立つ見込みのあるヒナの数が多い方が、初列風切の開始時期が遅くなった観察例がある(Young Guns 2013)。
 幼鳥は生まれた年には換羽しないが、早いものでは1月にすでに体羽の一部を換羽するものがいる(森岡ほか 1995)換羽ではないが、巣立ち直後に比べ、年明け頃の幼鳥は羽の淡色部分の錆色が落ちて白っぽく見えるようである。
 非繁殖個体は繁殖個体より換羽の進行が早い(Young Guns 2013)。目安として6〜7月に内側初列風切がごっそり抜けて新しい羽が伸長している個体は非繁殖個体と思われる(Young Guns 2013)。このことから、非繁殖個体では繁殖中に見られる換羽の制御はないようである。

 成鳥の羽衣について、第3歴年の4〜5月頃から冬にかけて行う換羽の後にほぼ成鳥の羽衣を獲得する(森岡ほか 1995)。オスでは第5歴年の換羽まで模様がわずかに変化し、メスは第2歴年の換羽でほぼ最終羽衣を獲得し、以後わずかずつ変化する(森岡ほか 1995)
 虹彩の色について、幼鳥は黒っぽい褐色であるが、成鳥になると黄色になる。オスでは生まれた年の翌年には黄色くなり、成鳥に近くなる(中川 2008)。メスでは5〜6年かけてゆっくりと褐色から黄色くなっていく(中川 2008)。


 なお、詳細な換羽の事例は森岡ら(1995)の記述を参考にしていただきたい。

   (夏期の非繁殖個体の1例。繁殖中のオスではここまで同時に換羽しない。)




 チュウヒの声は大まかに以下のように分けられる。実際の声についてはメニューの「リンク」を参照のこと。


警戒や威嚇

 チュウヒ同士での警戒音や威嚇について、テリトリーに他のチュウヒが侵入すると、「ピィーヨ、ピィーヨ」と甲高く鳴いたり(鶴 1990)ミビャア、ミビャア」と聞こえる声で鳴く(平野 2005)越冬期にはチュウヒ同士の行動圏が重なりがちとなることから、チュウヒ同士による警戒音をしばしば聞くことができる。
 人が巣に近づいた時には「ケッ、ケッ、ケッ、ケッ」と鳴く(西出 1979)。チュウヒの近くにキツネがいた状態で「キャキャキャ」と鳴きながら飛び立った記録もある(環境省自然環境局 2015)これらの声は主に捕食者に対して発する警戒音だと思われるが、ごく稀に
チュウヒ同士での警戒音として発せられることもある。


ディスプレイ

 波状飛行をしながら「ミューア、ミューア」や「ミュー、ミュー」と鳴く(蒲谷ほか 1985)。これはオスもメスも同様である。


給餌

 餌を持ってきたオスは上空を旋回しながら「キュイー、キュイー」と鳴き、メスは巣を飛び立ち「キャ、キャ、キャ」と鳴きながらオスの後を追いかける(西出 1979)ヒナが空中で親鳥から給餌を受ける際も、前述のメス同様に声を出しながら親を追いかける。ただし、声を出さずに空中で給餌を行うことも多い。


首かしげ


 まれにチュウヒが首をかしげる行動を見せることがある。
 筆者が観察した際には、木の枝に止まっていたチュウヒが10羽ほどのカラスに10数分間ほど囲まれた状況だった。この際、チュウヒ
は首を左右に動かしてカラスを警戒しながら、首を45°かそれ以上かしげる行動を頻繁にしていた。
 人が近づいた時にも首をかしげる行動をした例があることから(富士元 2005)、警戒時の特殊な行動だと思われる。ただし、通常はカラスやノスリと同じ樹上で居合わせても首をかしげることはなく、人が近づいた時にはすぐに飛んで逃げることから、首をかしげる行動をする条件は不明である。



天敵


 国内では、イタチ(西出 1979,高橋ほか 2017)、タヌキ(高橋ほか 2017)、
ハシブトガラス(中川 2006)によりチュウヒの卵や雛が捕食された事例が報告されている。他にもキタキツネやオジロワシが天敵として挙げられている(先崎 2017)。
 古巣に餌を置いて獣類を誘引した実験では、繁殖成功巣での獣類の出現率は40%、繁殖失敗巣での出現率は71%だったとの報告がある(高橋ほか 2017)。また、営巣場所周辺の中型〜大型哺乳類の生息密度が、チュウヒの繁殖の成否に影響する要因の1つになっているとの示唆もある(多田 2014(a))。標識調査やシカ道によって巣内への道ができると、それによって哺乳類が侵入し、雛が捕食された例も見られる(先崎 2017)。

 チュウヒの近縁種であるヨーロッパチュウヒでは、卵やヒナの捕食動物として、キツネ、イタチ、イノシシ、サンカノゴイが挙げられている(Bengston 1967, Underhill-Day 1984,Witkowski 1989)。

 


 

日中の過ごし方


 日中、チュウヒは採餌飛行をしていない間、地上や樹上などに止まって過ごしている。チュウヒが見晴らしの良い樹上に止まっている姿を見かけることは多いが、地上に降りて過ごしていることも多い。場合によっては1時間以上を同じ場所に止まって過ごすこともあり、筆者は成鳥が7時間ほど同じ木に止まって過ごしていたのを観察したことがある。越冬期のハイイロチュウヒでは、日中の46.4〜85.5%を休憩に費やし、採餌に費やした時間は6.3〜16.5%だったとの記録がある(Temeles 1989)。
 止まっている時には両足で立って過ごすことがほとんどだが、ときに片足を下腹部の羽毛の中にしまって、片足立ちになることがある。また、ごく稀に成鳥が座ったり伏せた状態で過ごすことがある。(ただし、巣立ち前のヒナでは、巣内で座ったり伏せたりすることは珍しくない)
 長時間に渡って止まっている際には、餌を探して周辺を見渡す行動をする以外にも、羽繕いや伸び(片翼だけを大きく下に伸ばす)、嘴を枝などにこすり付けての身づくろいをすることも多い。羽繕いの際には、尾羽を上げて、尾の付け根の脂腺を嘴で触っている姿もよく見かける。筆者の印象として、羽繕いは朝のねぐら立ちの後や雨上がりの後に多く見られる。
 なお、日中の休み場として、チュウヒがヌートリアやシカの休み場を利用することもある(多田未発表)。雨天時には特に雨宿りをするような様子をみせないことも多く、普段止まっている木の上で雨に濡れながらじっと立っていることも多い。

  
  (背丈の低い草地や、ヨシ原と水辺の際に降りて過ごしている姿もよく見かける。)

  (尾羽の羽繕い)  (片翼・片足の伸び)

   
  (シカの休み場の一例。中央にチュウヒの白い羽が落ちている。)

      



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